苗字の話(2/3) 苗字の数は減っていく?(特殊出生率=1.37の場合)

結婚すると苗字はどちらかのものに統一されるため、苗字の数は減少する一方です。
では、その減り具合はどのようなものになるのでしょうか。以下のモデルで検証してみました。

  • 男女の数は等しいとし、全ての男女は同時に結婚して子をなすものとします。
  • 再生産率をrrとすると(rrを2倍すると特殊出生率になる。rr = 1で人口維持)、
    • 1. rr / (1 + rr) の確率で一人子供を産む。産まなかった場合は終了。
    • 2. 産んだ場合は、再度1の処理を行う。
    • 生まれる子供の数の期待値はrrになります。
  • 子は親のどちらかの苗字を継承します。

苗字の世帯数の分布は、苗字館のデータと、前回計算した推計値を使います。総人口は2005年の統計値である127768000人とします。このときの特殊出生率は1.37だったそうなので、再生産率は1.37/2とします。
↓こちらがシミュレーションの結果です(計算結果はこちら)。青が人口、赤が苗字の数です。横軸は世代数です。等比数列的に両方とも減少してます。

↓こちらが対数軸のものです。

人口の再生産率が7割を切っているので、2世代ごとに人口が半分になっていって、48世代目が一人も子を残せなかったためそこで日本人が滅んでいます。一世代が約30年として、36世紀頃に滅ぶ計算ですな。
一方で苗字の数の減り方は人口の減り方よりは緩やかなようです(特に序盤)。30世代後(今から1000年後くらい)から苗字の減り方が急峻になるのが見て取れます。人口がある一定数を切ると苗字の数の維持が急に困難になるのかもしれません。
それにしても、2世代後の時点で既に苗字が24万個から15万個に激減しているのが興味深いところです。レア苗字の保全は急務かもしれませぬ。

次に、上位10個、100個、1000個、10000個、100000個の苗字が占めるシェアを見てみましょう。↓

指数関数でもべき乗則でもない変化が見られます。どの線を見ても「しばらくの間維持」->「急激にシェア減退」->「全滅」という経緯をたどっています。ここでも、人口が一定値を切ると苗字の数の維持が急に困難になる可能性が示されているように思えます。

この結果からなにがわかるか。
我々が生きている間(今から+2世代くらい)に、苗字の数は2/3程度に減少するでしょう。
しかし、上位10, 100, 1000, 10000個の苗字が占めるシェアはそれぞれ現在と変わりないため、苗字の数が減少したことを体感することはないはずです。
レア苗字はひっそりと消えていきます。

なお、シミュレーションに用いたコードとデータはここに置いています(Python3系で実行)。計算に時間がかかるので並行処理化したのですが、スレッド数を増やしても全くスループットが上がらないことに驚愕するものの、Pythonだし仕方ないか。