苗字の話(3/3) 苗字の数は減っていく?(特殊出生率=2.00)

子どもが体調を崩したり、実家に帰ったり、子どもが体調を崩したり、子どもが体調を崩したり、で全然PCを触れておりませんでした。ようやく続きでございます。

前回、苗字の数がかなりのペースで減っていく様子をみました。が、人口減少の環境下では苗字の数が減るのは当然のこと。再生産率が7割しかないということは、2世代で人口が半減してしまうわけで。
次は、条件を変えてシミュレーションしてみます。再生産率=1.0、つまり人口の増減が(乱数の要素を除けばほぼ)無い社会ではどうなるのか。再生産率だけ変えて、シミュレーションしなおしてみます。

人口減がないのでシミュレーション時間がえらい長くなりましたよ……


こちらがシミュレーションの結果です(計算結果はこちら)。青が人口、赤が苗字の数です。横軸は世代数です。
人口維持の環境下では、100世代後(3000年後?)でも4万個程度の苗字が維持できるようです。
対数軸で表したものも掲載しましょう。

苗字の数は概ね直線ぽいですが、序盤のカーブが急。もしかして……と両対数で表示すると、

すごく……直線です……(相関係数0.994)。人口維持の環境下では、苗字の数と世代数は冪乗則の関係にあるようです。なんでだろう……
これは定性的には何を表しているんでしょう。よくわかりません。順位と頻度の間には冪乗則が成立することが多いという経験則は、まぁ理解できなくはないのですが、世代数と頻度の間に冪乗則が成立するというのは理解に苦しみます。遺伝的多様性の研究なんかにヒントがあるんかなぁとか想像しますが。

次に、上位10個、100個、1000個、10000個、100000個の苗字が占めるシェアを見てみましょう。

殆ど減っていません。数世代の後に10万位以下の苗字は全滅してしまうのですが、上位一万位の苗字のシェアは100世代経過してもほとんど変化しません。


今回苗字の数の変化を検討してみようと思ったのは、現在のような命名システムを使い続けていくと苗字の数が激減し、中国や韓国みたいに数少ない苗字に集約されてしまうのではないか?と考えたからです。
シミュレーションをしているうちに、苗字の減少といっても分けて二つの現象が現われるということがわかってきました。
1. レア苗字が絶滅する。
2. 有力苗字による寡占が生ずる。
中韓化は2.の方の現象ですね。

人口減少の環境下では苗字の数は指数関数的に減少し、レア苗字の絶滅、有力苗字による寡占の両方が生じましたが、その要因は人口減少が主でした。
人口維持の環境下では苗字の数の減少はかなり緩やかで、100世代後でも4万個もの苗字を維持することができている上、有力名字による寡占は生じませんでした。よって、苗字の保全という観点からは、現在の命名システムにはそんなに問題はなさそうだと言えます。もちろん、人口維持の環境下でも今から2世代後に苗字が24万種から17.5万種に減少してしまうことを「問題ない」といっていいかという話はありましょうが。

人口減少が苗字の数に非常に大きな影響を与える、特に人口が一定値を切ると苗字の数の維持が急に困難になるという性質を考えると、戦乱などにより人口が急減するような状況が苗字の数の維持に対する一番大きな障害になっていそうだ、と言えましょう。
中国や韓国で苗字の数が少ないのは、歴史的に古くから苗字を名乗っており、かつ時折人口が激減したからなのかな?などと想像します。昔はもっとたくさんの苗字が存在していたのかも。
一方で日本は、現在のかっちりしたシステムに基づいて苗字を名乗り始めた歴史が浅く、その後大きな人口減にも遭遇していないため、バリエーションに富んだ苗字の数々を維持できているのかもしれません。

個人的にはレア苗字は好きなので、創姓、つまり新たな姓を名乗ることができるようなシステムも悪くないのではないかと思っているんですけどね。保井春海が後に渋川春海を名乗ったように。むちゃくちゃな創姓を抑止したいならば、家系をさかのぼって祖先の誰かが名乗っていた苗字であれば名乗れるようにするとか。
不祥事を起こした企業が企業名を変えるような感じで、悪いことするたびに名前を変える人が出てきそうな気もしますね。やっぱダメか。